Yuka Fukumoto

work#02

Yuka

Fukumoto

福本由佳

原子燃料工業株式会社

エンジニアリング事業部

燃料技術部 PWR燃料技術グループ

  • 2010年

    大阪府立大学大学院工学研究科 修了

  • 2010年

    原子燃料工業(株)入社 熊取事業所品質保証部燃料品質グループ

  • 2014年

    燃料技術部PWR燃料技術グループ 
    兼務 熊取事業所品質保証部燃料品質グループ

  • 2018年

    燃料技術部PWR燃料技術グループ

  • 2023年

    燃料技術部PWR燃料技術グループ 兼務 大阪営業部

2023.12.14

専攻分野を勘違いして、気が付けば原子力!?

原子燃料の開発に携わる

私の勤務する原子燃料工業(株)は、原子力発電所で使用する「燃料集合体」を製造する会社です。
「燃料集合体」は、二酸化ウランの粉末を焼き固め、小さな円柱形に加工したペレットと呼ばれるものを金属製の管に収納し、それらを束ねて作り上げます。

国内には沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)の2種類の商業用原子炉がありますが、当社はそのどちらの「燃料集合体」も製造できる唯一の企業です。

私が所属する部署ではPWRを担当し、燃料の安全性や経済性を高めるための開発を行っています。
仕事の現場には、実物大の模擬燃料を取り扱える大型設備があり、振動させて挙動を調べたり、物理的な負荷をかけた試験を行っています。そうした試験を行い、新しい燃料の設計に必要なデータを取得し、燃料の評価や開発をするのが私の仕事です。

金属材料の魅力に気付いてソフトからハードへ

この職場にたどり着くまでの道のりは、実は勘違いからはじまりました。
科学が好きで理系志望ではありましたが、薬品や化粧品、ポリマーなどの柔らかい素材の開発をしたいと思っていたんです。
白衣を着た研究職にあこがれていましたから。

それで、学生時代は素材開発に繫がる材料工学を専攻しました。
ところが入学してはじめてわかったのですが、大阪府立大学の材料工学科は前身が金属冶金工学科でソフトな素材ではなく、鉄鋼、アルミ、銅などの金属材料を研究対象としていたんです。

なんか違うと気付いたときにはすでに遅く、仕方なく金属を扱ってみたら、意外とおもしろかった。白衣でなく作業服を着るのも悪くなかった。これは自分でも驚きでした。
白衣を着て化粧品を開発するような仕事の方が、女性には合っていると勝手に思い込んでいたんです。

夢を感じた大型加速器での実験

十代のころは、科学をテーマにした小説や漫画が大好きで、壮大なテクノロジーを駆使した未来社会を夢見ていました。
大学では、そんな世界を彷彿とさせる高エネルギーのビームを照射できる加速器を利用する研究があったんです。

加速器は、粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギ-状態にすることができる装置で、小説や漫画の世界では、タイムトラベルのエネルギー源として登場したりします。

当然ながら、私はその加速器を使った実験に夢中になり、放射線による金属材料の強度の変化などを調べたことが、原子力の分野に足を踏み入れるきっかけとなりました。

原子力については賛否両論がありますが、意見が分かれる分野だからこそ、あえて興味が湧きました。
危険だからと忌避される部分もありますが、それならば実際に原子力の分野で、本当に危険なのか自分の目で確かめてみたい。そんな思いが生じたことで、将来の進むべき方向性が決まったんです。

300人中たった一人の技術系女性社員

就職にあたっては、学生時代の経験をいかし、放射線環境下の金属材料を扱うような仕事がしたいと思いました。ですから、就職活動では、電力会社から原子力の代表的なメーカーを訪問しました。
でも、そうした大企業では管理やマネージメントの仕事が多く、入社しても、希望する対象に関わる仕事ができるかどうかわかりませんでした。

そこで、就職希望先に急浮上したのが原子燃料工業(株)です。
原子燃料を製造する会社なら、放射線環境下の金属材料を扱うのは当たり前ですし、会社の規模的にもちょうどいい。
ここなら、自分の望むような仕事ができると思いました。

そうして、希望に胸膨らませて入社したのですが、少し不安な気持ちもありました。なぜなら、所属先の事業所の技術系の女性社員は私ひとり。残りの約300人は、すべて男性社員だったんです。

信用してもらえない・・・

原子燃料工業(株)には、私が入社する以前にも技術系の女性新入社員がいましたが、みんな数年で退社してしまったとのことでした。

そこに私が、唯一の技術系女性社員として配属されたのです。
当然のことながら、またすぐに辞めてしまうのではないか? 重要な仕事をまかせても大丈夫か?と不安げな目が向けられます。
なかなか信用されず、認めてももらえないというかなり辛い状況です。

だからといって、落ちこんでいてもしょうがありません。
自分のやりたい仕事に就けたんだから、目の前のことに精一杯取り組もう、真摯に仕事を続けることで信頼を勝ち取っていこうと思いました。
とはいえ、心が折れそうになることも・・・。
辞めてしまおうかと思ったこともありました。

一人じゃない! と気付いたWiN-Japanとの出会い

そんなとき、電力会社の女性の担当者が来社されたんです。
自分以外の技術系の仕事をしている女性に会ってみたいとずっと願っていたのでうれしい衝撃でした。

その後すぐに、その女性担当者もメンバーになっているというWiN-Japanに入会しました。

入会してさらに驚いたのは、原子力の仕事をしている女性の先輩が多くいただけでなく、みなさんがいきいきと前向きに仕事に取り組んでいたことです。
でも、お話をうかがうと、誰もが私と同じような状況で悩んだり、孤軍奮闘したりした経験がありました。
「うまくいかないときも腐らない。力を溜める時期だと思うこと。そして続けることが一番大事」
そんな経験を乗り越えて仕事を続けている先輩方の存在に、どれほど勇気付けられたか知れません。

2019年には、出身大学に声をかけてWiN-Japan会員との交流会を企画しました。
原子力を知るきっかけがなかったり、この分野は男性ばかりでハードルが高そうと思ったり、とくに女子学生は、勝手に思い込んでしまうことがあります。
紆余曲折を経て原子力にたどりついた自分の経験を伝えることで、その先入観を取り払うことができればと思ったからです。

交流会では、原子力に興味を持ったきっかけや、原子力の魅力を伝えることができ、学生たちと大いに盛り上がりました。
学生との交流会は、いつかまた開催したいと思っています。

大事なのは相手の気持ちを想像すること

私には、仕事をするうえで心掛けていることがいくつかあります。
そのひとつがチームワーク。
同じ職場の仲間たちが何を求めているのか、どんなことで困っているのか、相手の気持ちを想像することが大事だと思います。
それと同時に、チームに迷惑がかからないよう、子育て中の自分の状況もきちんと伝えるようにしています。
仕事はひとりではできません。
自分の職場だけでなく、ユーザーである電力会社や、原子燃料の規制を行う原子力規制庁まで、何を思い、どんなことを考えているのか、相手の気持ちを想像しながら目の前の仕事をしていくことが重要です。

今後は、やりがいを感じている今の仕事を続けながら、さらに経験を積んで、後輩のサポートもしていきたいと思っています。
今の私は子育て真最中。そのために仕事をセーブしなければならず、焦ることもありますが、そんな気持ちともうまく付き合いながら、へこたれず、そしてあきらめず、これからも目標に向かって歩み続けていきたいと思います。
(この記事の内容は、インタビュー当時のものを掲載しています)